君のその綺麗な唇で言わせてみたいことがある
君しかいらない
オレは割りと面倒見がいい方だ。
なぜなら現に今も、オレ以外友達がいないという哀れな友人の阿呆な相談に乗ってやっているからだ。
「それで、結局お前は何が言いたいんだよ。」
「要するにだな、オレはオレの一番大切な人間に愛されている確信がないんだ。」
…うぜぇ。「確信がないんだ。」とか言う割りにはなんだ、この自信に満ちた表情は。
「んなこといったって、お前十分に愛されてんだろうが」
見ればわかるんだよ。
「だけどあいつはオレに何も言ってくれない。」
ああーてことはあれか。愛されてる自信はあるが、言葉にだしてくれなきゃ気がすまないのか。
まったく、いい加減にしてくれ。そんなことはオレに言っても意味が無いだろう。
オレは体外面倒くさくなってきて欠伸をした。
「もう〜だったら違う人と付き合っちゃえよ〜。」
「んだと!?」
「だってさー、認めたくないけどお前の顔を好きな女の子ってわんさかいるじゃん。こないだだって大勢の女の子に囲まれて好きだのなんだの言われてたじゃん。それで満足しろよな〜。」
オレの言う通りだ。少しは満足しろ。
だがやはり隣の堅物の王子様はやけにまっすぐな視線でこう言い切った。
「どんだけ大勢の奴等に好きだって言われても、あいつが言ってくれない限りそれらは無意味なんだよ。あいつのだけが欲しい。それ以外は何もいらないし、欲しくもない。」
あーあ、これだよ。こんなんだからオレよりも人気があるんだ。全く本当に腹が立つ。
だけどそれでもオレは面倒見がいいので性懲りもなく相談にのってしまうのだ。自分の性格が嫌になる。
「言葉が全部なわけないだろー?お前が本人にもそういうことを言ってやったらいつか言ってくれると思うけどな。」
「でも…」
まだ言い募ろうとするサスケにとどめの一言を言ってやる。
「しつこい男は嫌われるぞ。」
サスケは不機嫌そうな顔をして黙りこくった。
昔サスケがカカシ先生に言われた名台詞。効くんだな、これが。
「そんじゃまぁ、カカシ先生によろしくな。」
どうせ数分後にはオレの言葉を真に受けて実行するであろうことは目に見えていた。
ま、そういうとこだけはいいとこだよな。
『しつこい男は嫌われるよ?』
昔のカカシの言葉を思い出して思わず言葉がでなかった。
あの時のこと、ナルトに相談するんじゃなかったな…。
部屋に入ると椅子の上でカカシが長い手足を窮屈そうに縮めて寝ていた。
やってんだこの大人は。
ひざに顔をうずめているのか銀の髪の毛が大きな毛玉のように見えてオレは思わずぷっと吹いてしまった。
カカシの髪を掻き揚げてやる。
暑いせいか額にはうっすらと汗が浮かんでいるその白い額にちゅっと音をたててキスをしてやった。
カカシの髪の毛から香る微かな甘い匂いに胸がうずく。
カカシの長い睫が揺れた。
「…うっ、わぁ!サスケ!」
「よう、よく寝てたな。王子様のキスが必要かと思ってたのに。」
「べ、別にいりません。」
「そうか残念だな。あんただったらお願いされなくてもディープなのやってやるのにな。」
「バカ…」
カカシははぁーとため息をついて「育て方が間違った」とかなんとかを呟いた。
カカシがまだぶちぶち俯いて文句を言ってたのでオレはかがんでカカシの顔を覗きこんで言ってみた。
「カカシ、オレのこと好きか?」
一瞬でかっと顔が赤くなった。
見てるこっちがどきっとする。
「な、何急に言い出すのさ。」
しどろもどろになって視線が泳ぐ。首筋から綺麗な鎖骨にかけてうっすらと赤くなっていた。
オレはそんな仕草を見るたびにいちいち心臓が馬鹿になりそうだと思った。
「うん?ちょっとな。でもきっとあんたは今は言ってくれないだろうからあんたが言ってくれるまでオレがずっとあんたに愛の告白をしてやる。」
「はぁ?…何のプレイだよ…。」
「まぁ、新しいプレイかもな。」
「誰だよーサスケにこんなこと教えた奴はー…」
頭を抱え込むカカシの耳元に唇を近づける。
「好きだよ、カカシ。」
「ばか。」
「死ぬほど好き。」
「う、るさい。そういうの、オレ嫌い。」
カカシがいやいやをするように首をふる。
「でも死ぬとあんたを守れなくなるからオレは死なない。」
「勝手にすればいいじゃない。」
きゅっと目を閉じられた瞼にもキスを落とす。
「オレはあんたを好きになった瞬間一生あんたを守るって決めたんだよ。」
「っ!」
吐息ごとそう吹き込むとカカシの耳が赤くなった。
可愛い。
カカシの耳に軽く噛み付くと胸を押された。
「いい加減にっ」
「あんたしかいらない。」
胸を押す手をつかんで手の甲にキスを落とす。
「なぁ、あんたを幸せにできるのは世界中どこを探してもオレだけだよ。」
ゆるぎない自信。
だってそうだろ?
「オレは世界中の誰よりもあんたを愛しているんだから。」
手の甲を強く握って目を見ると、カカシは赤い頬で薄く微笑むと小さく呟いた。
「ほんと、お前ってバカなんだから…」
『あんたしかいらない』
オレは有り余る程の愛を君に囁く
だからねぇ、いつか君もオレに言ってよ
「君しかいらない。」
その一言を。