「蛍光灯、切れたから取り替えて」
さも当然のようにそんなことを言う。
俺はパシリか。
廊下の蛍光灯
「・・・電球は」
引き受けてしまう自分が情けない。自分の家じゃないのに。
「はい」
カカシの手から電球を受け取って、問題の廊下へと向かう。
確かに、暗い。
「よろしくね〜」
カカシはリビングへと戻って行った。
・・・人に頼んでおいて、それはないだろ。
でもカカシが居なければいけない理由もなかったので、黙認した。
天井を、正しくは天井の蛍光灯を見上げる。
そして、俺は重大な問題にぶつかった。
・・・届かねぇ。
そう、身長が足りない。
苦し紛れに背伸びをしてみたが大して変わるはずもなく、俺は電球を片手に天井を見ながら大きく口を開けてしまった。
今から踏み台取りに行くなんて、そんな恥ずかしいこと出来るか・・・!!
こうなりゃ、天井に貼りついてでも取り替えてやる。
「あっれぇ・・・サスケ、どしたの」
「カカシ・・・」
目下には、逆さまに映ったカカシ。
こんなタイミングで来るなよ。
「こ・・こっちの方がやり易かったんだよ」
「へぇ、そうなんだ。せっかく踏み台持ってきたのに」
カカシの手には、台所用の踏み台。勿論、俺の。
「・・・あんた、わざとだろ」
絶対そうだ。根性捻じ曲がってんじゃないのか?
「いや、まさか」
顔が笑ってる。十中八九わざとだ。
「あんた、最悪だ」
「だって、サスケがどうするのか気になって・・・」
口元に手を当てて笑う。しまいには声まであげ始めた。
「あっは、ははっ・・はぁ〜・・・面白い!」
「全然面白くねぇ」
いまだ逆さに映るカカシを見下ろして、悪態をついた。
「ん、でもありがとう。ちゃんと取り替えてくれたんでしょ?」
そんな顔で笑うなっつーの。
「・・・い」
「え?」
「あんた、うざい」
言いながら、俺はカカシの上に飛び降りた。
いきなりの事態に、カカシは思わず地面にへたり込む。
「うっひゃ!ちょっと、サスケ!!」
カカシの顔が、至近距離で見えた。
「あんたが悪いんだからな」
もう知るか。
俺を馬鹿にした罪、きっちりと謝罪しろ。
天井からは、取り替えたばかりの真新しい光が降っていた。